スタッフブログ

2020.07.07

在宅勤務

㈱あさひ合同会計 小椋

 コロナ禍の影響で、世の中で在宅勤務が概念的にも実際的にも広がりをみせている。それを導入した会社の普通職員や管理職、経営者がテレビで意見などを言っているのを聞く。「最初は戸惑いましたが、2ヶ月くらいで慣れてきました、特に不都合は感じませんよ。効率も上がった気がします、なんで今までやってなかったんだろう」

 結構前(10年以上前と思う)のことだが、スモールオフィス/ホームオフィスという言葉が言われた時期があった。今回の“在宅勤務”と似た感じの意味で一時期良きものとしてもてはやされたが、今回のように、社会において広範囲に一気に導入されそうな気配までには至らなかった。一部のエキセントリックな、または新しい物好きの事業者が導入するだけで、そのうちには言われなくなった。出社勤務型から在宅勤務型に本気で軸足を、と考える事業者は実は少なかったのだろう。

 当時は私は断然賛成だった。通勤の時間がカットされるし、外回りのみの日などは体力の使い方にも一定の余裕が生まれ大変良いことだ、仕事の効率も上がるのだろう、と思っていた。

 しかし、今では必ずしもそうは思わない。否定するわけでは無いのだが、一気呵成にやることでもないと思う。

 そもそも“効率がよくなる=絶対善”という考え方にはここ数年は私は疑念を持っている。スマートにやりすぎるのにも抵抗がある。一見無駄足に見えてもそこで見えた景色が役に立ったり、近年排除されがちな直接的な対話が何か別の効用につながったり、相手の考え方が見えたり。画面越しではそういったことが何割か低減する。ペーパーレスとかそういう効用はあるかもしれないが、少なくとも総合的な効率が良くなる、というのは嘘だと思う。故奥山先生の言葉が思い出される。「泥田を這いまわらにゃあ、分からんよ」

 有事の際でも業務を継続させるために、持つべき働き方のチャネルだとの考え方もある。それはその通りだが、だからといって普段から積極的に利用するべきということにはならない。あくまで限定的な利用に留める、というのが今の私の意見だ。

 私はほとんど毎日書店に行く。何が世の中で言われているかを概観するためだ。新書なり雑誌なりで、“在宅勤務”についての利点や弊害が書いたものが本当に早く出ればいいなと思う。できれば、人間にとっての長期的な弊害を危惧するものが。しっかりしたものはまだ目にしない。多数意見や世論に流されることなく、自分の頭でよく考え発信するしかない。