スタッフブログ

2015.12.01

上岡物語

 ㈱あさひ合同会計 岡山   

 大手家具店で購入したい草のラグを片付け、冬用のカーペットを敷いた。いるものといらないものであふれかえった部屋を夏仕様から冬仕様へ、やっとこすっとこ模様替えを終えたのは11月も半ばに入った頃だった。これで何度目になるだろうか。半年ごとにやってくる重労働になかなか気持ちが乗らなかったため、優にひと月は見て見ぬふりをしていたが、気温が下がってくる日々に尻を叩かれているような気分だった。

 岡山に出てきたのが18歳の春。初めての一人暮らしに青春真っ只中の純朴青年の心は踊っていた。最初に作った晩ご飯は、食パンに玉ねぎと卵をのせて焼いたもの。自称クロック・ド・マダムを完成させた達成感に満ち溢れ、携帯電話で写真を何枚も撮った。半年後の自分に一枚残らず削除されることをこの時はまだ知らない。

 何かと自由が多かった学生時代。自炊から発展し研究心が芽生える。お米が豊富にあるときは甘酒作りに励んでいた。梅干しなどを漬けるためのガラス製の大きな保存瓶に、炊いたお米とスーパーで買った米麹とおいしい水を仕込んだ後、布団にくるみ温度をなるべく高く保つ。放っておけば2,3日で完成するが、如何せん布団は一枚しか持っていない。必然的に夜は瓶を抱えて眠ることになり、自分の体温で麹菌の発酵を促していた。炊飯器の保温機能という産業革命がおこるのはもう少し後の話になる。

 行きつけの理容室もできた。インターネットで調べただけで行ってみたが、幸運にも人柄の良い、仕事がとても丁寧な方だったため、続けて利用させてもらっている。洒落が言いたかったわけではない。程なくして、出かけるのが億劫になると、“自分で切る”という選択肢を試してみたくなるのが世の常。当然、初めは素人がうまく切れるはずもなく、その方への何か申し訳ない気持ちもあった。ところが人間というのは技術の進歩と何かを忘れるのが早いもので、最近は全く顔を出せなくなってしまっている。久しぶりに行ってみたくなってきた。

 岡山歴はまだまだ浅いが、少しずつ増えてきた思い出を振り返りながら、敷いたばかりのカーペットにこぼしたカフェオレの跡を必死に叩き洗いする日曜日。来年も使えるだろうか。