ちょっと気になる経理処理

2022.09.12

消費税の課税取引となる土地の貸付け

消費税の非課税取引は、特別の政策的配慮に基づくものや、性質上消費税になじまないものに分けられていて、限定列挙されています。その性質上、消費税の課税取引になじまないものの一つとして、「土地の譲渡・貸付け」があります。そこで今回は、消費税の非課税取引における土地の譲渡・貸付けのうち、土地の貸付けにポイントをしぼって、どのような考え方をするのか確認します。

消費税法では、土地は使用や時間の経過によって消耗するものでないため、“消費される”という考えを持っていません。そのため、土地の貸付けは非課税とされています。しかし、その中には非課税から除かれる取引があるのです。

“土地の貸付期間が1か月未満のもの及び駐車場などの施設の利用に伴って土地が使用される場合”のものが非課税取引から除外され、消費税の課税取引とされています。前半の“貸付期間が1か月未満のもの”は、実際の貸付期間ではなく、契約書によって期間を判断するため、契約書でその期間が明らかになるかと思います。一方で後半の“駐車場などの施設の利用に伴って土地が使用される場合”とは…どのような状況なのでしょうか??

通達によれば、建物、野球場、プール又はテニスコート等の施設を例示として、その施設の利用が土地の使用を伴うとしても、それは、施設の貸付けであって土地の貸付けではないと示しています。土地の使用が、上記“施設”に該当するか否か(その土地の貸付けが課税取引なのか非課税取引なのか)の判断を巡り、最高裁まで争われた事件があります。
  

個人事業者Xは、契約車両の駐車のために2区画の土地を貸付けていました。ひと区画は砂利がひかれ、ロープや番号札等で区画わりがされている状況、もうひと区画はアスファルトが塗装されていて、白線の区切りやフェンスの設置がなされていました。Xはこの土地の貸付けに係る消費税は非課税であるとの認識をしていたことから、消費税の申告を行っていませんでした。しかし、税務署からは消費税の課税取引であるとされ、決定処分を受けることとなったのです。
   

Xは、“土地を分割して、貸すために最低限必要な道具にすぎないロープや番号札は「施設」にあたらないため非課税取引である”と主張する一方で、裁判所は、Xの主張に対し、“駐車場という施設の利用に伴って土地が使用される場合には、駐車場という施設の貸付又は車両の管理という役務の提供に おいて消費を認識することができる”ということを根拠に、課税取引であると判断され、Xの主張は退けられてしまいました。

💡ここで「土地の貸付け」が非課税となるポイントは、貸付けを行う土地が更地状態であることを言っています。

具体的には、貸付けを行う土地が、施設として何ら手が加えられていないことや、駐車場などの用途に応じた地面の整備等をしていないことです。そして、これらに該当しない、駐車場のロープの区切りや番号札の設置、立体駐車場など(裁判所も様々なものが想定されると考えている様です。)が設置された土地は、「施設の利用に伴って土地が使用される」と判断され課税取引となるのです。

土地の貸付けは消費税の非課税取引だと思われがちですが、なかには課税となる取引も存在します。特に駐車場の賃貸を行っている方は、どのような状況で貸付けを行っているか、改めて確認してみるのはいかかでしょうか。