ちょっと気になる経理処理

2021.08.05

インボイスの登録申請について

 令和5年10月1日から適格請求書等保存方式「インボイス制度」が導入されます。まだ先の話のようですが、その適格請求書(以下インボイス)を交付することができる「適格請求書発行事業者」の登録申請は令和3年10月1日から始まります。(インボイス制度が始まる令和5年10月1日からその登録を受けるためには令和5年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります。)

【インボイス】
 インボイスとは、売り手が買い手に対し、正確な適用税率や消費税額等を伝えるために登録番号、税率ごとに区分した消費税額等の必要な記載事項を備えた請求書のことで、適格請求書発行事業者として申請を行い、税務署による審査を経て登録通知を受けた事業者のみ交付することができます。※インターネットで公表されます。

 今回はインボイス制度の内容のうち、仕入れ税額控除の観点から適格請求書発行事業者の登録を行う際に検討するべきことについて簡単にまとめました。令和元年10月に税率が引き上げとなり、同時に軽減税率制度が開始され、日本の消費税は複数税率となりました。それにより、請求書等に記載される消費税額についてもより複雑なものとなり、これに対応するための制度としてインボイス制度が始まります。現状課税事業者である方はもちろんのこと、免税事業者である方においても大きく関係する改正となります。

【インボイスと仕入れ税額控除】
 買い手が仕入れ税額控除の適用を受けるためにはインボイスを受け取り、それを保存する必要があります。つまり、売り手がインボイスを発行することができなければ、買い手は消費税の計算において、売り手に対して払った消費税を控除することができなくなります。

【消費税の計算方法】 
消費税=課税売上に係る消費税額-課税仕入れに係る消費税額

 ここで問題となるのが、適格請求書発行事業者=課税事業者であるという点です。消費税には、基準期間に係る課税売上高が1,000万円以下の事業者は、消費税を納める義務が免除される規定がありますが、その免税事業者はインボイスを発行できないため、免税事業者から仕入れを行った課税事業者は、消費税の計算において仕入れ税額控除の適用が受けられなくなります。つまり考えられる可能性として、買い手はインボイスを発行することができない事業者からの仕入れを選択しづらくなり、免税事業者にとって不利に働くことになります。だからと言って、インボイスを発行するために課税事業者となり、消費税を納める義務を負うという選択をするか否かはメリット・デメリットを慎重に検討する必要があります。(なお、令和5年10月1日以降6年間は、免税事業者からの仕入れについても一定の割合の仕入れ税額控除が認められる経過措置が設けられており、現状の全額控除から段階的に控除できる割合が減っていく形となります。)
 現状課税事業者であり、事業規模から判断して今後も継続して課税事業者であることがはっきりしている事業者については、適格請求書発行事業者の登録を行うことにデメリットはないと言えます。インボイスを発行できる環境整備を行い、登録申請を行ってください。