ちょっと気になる経理処理
2020.05.08
やむを得ない報酬減額
会社を経営されている方であれば「役員報酬額は原則として一度決めたら1年変更できない」ということを聞いたことがあるかと思います。今回は例外についてのお話。
まず、一度決めた役員報酬額を簡単に変更できない理由として、役員報酬は会社から受け取る給与額を役員自らが決めるため、いわゆる「お手盛り」的な支給が懸念されており、意図的な利益調整を防ぐ意味合いがあります。
では例えば、新型コロナウイルス感染症により会社経営に甚大な被害が出た場合にも、役員報酬を減額できないのでしょうか。答えはノーです。ケースによっては、減額することができると考えられます。
期中に予測できなかったことが起き、役員報酬を増減せざるを得ない場合には、「臨時改定事由」「業績悪化事由」による変更が認められています。
新型コロナウイルス感染症による影響の場合、以下のような理由での変更が考えられます。
①臨時改定事由
役員である個人のお子様が新型コロナウイルス感染症により学校休業となり、出社することができず業務を一切できなくなったため、その間の役員報酬を減額。
②業績悪化事由
新型コロナウイルス感染症による業績悪化に伴い資金繰り等が悪化し、借入金の返済や取引先への支払いが厳しい状態になった、又は、なると予測される場合の減額。
注意していただきたいのは、一時的な資金繰り等の都合や、単に業績目標値に達しない、あるいは利益調整等の理由で行う役員報酬の減額は①・②には該当せず、減額前後の差額は損金として認めてもらえません。①・②の適用は、税務署から否認される可能性がありますので、しっかり証拠を残しておく必要があります。財務諸表上での数字、資金繰り表や役員報酬を減額しなければならない理由を書類として作成する等、客観的に経営状態の著しい悪化を証明できることが重要です。これらの書類は、その他の保存書類とともに大切に保管してください。
役員報酬の減額には「株主総会等の議事録」が必要となります。臨時株主総会議事録等の中で、役員報酬の変更額とその理由をしっかり記載しておきましょう。また、標準報酬月額が変わる場合には、社会保険に関 する届出も必要となります。
役員報酬額の変更を検討される際は、弊社担当者へ事前にご相談いただければと思います。