役員コラム

2025.09.12

地域交通の未来 岡山

㈱あさひ合同会計 取締役相談役 髙木 正男

地域課題に挑む「交通改革、前夜~移動手段をつなぎ、みんなを笑顔に~」という山陽新聞主催のシンポジウムに参加した。

大学時代は「交通政策」のゼミで卒論テーマが「地方中小私鉄は生き残れるか」の私は、趣味の乗り鉄とも相まって公共交通の在り方について50年間ずっと気にしている。目が悪くなり10年前に車の運転を諦め交通弱者となった現在は、地域における移動の問題には一層深い思いがある。

鉄道やバスの廃止や縮小の話題が上がるたびに心を痛め、交通業者の利害と行政の将来を見越せない頭の固さを残念に思っている。吉備線のLRT化が持ち上がってから20年以上も経ってしまった。その間に富山、宇都宮が実現化し一定の成果が出ている。岡山の実行力、理解力の無さに半ば諦めモードがあった。岡山市の路線バス幹線支線再編計画や、JR芸備線他の存廃に社会実験が動き出したりしているが、成功の可能性はどうだろう。

今回のシンポジウムで高校生、大学生のしっかりした意見や行動が解り、若い力と将来に向けた新鮮な発想や、JR西日本の「今まで行政とだけ交渉していたが、もっと住民の意見を重視すべきと実感した」という発言にはこれまでの閉塞感を払拭できる可能性も感じた。

現在、介護施設が個別バラバラに送迎している非効率を集約して外注に回し、その中に寄り道サポートや通所以外のお出かけサポートができるようにする。他人と会話しながら自力での外出を、手出しせず見守ることで介護予防に繋げる「地域まるごとデイサービス化」の発想は、久しぶりにこれだ!と思った。子供の通学・習い事、親や配偶者の通院・買い物を自家用車で送迎して自身の大半の時間を消費してしまっている人が多く存在し「送迎人生」と呼ばれている。就労時間を削る社会的損失の解消も視野に入れた民間の新しい試みにも触れられた。

介護福祉を絡めたデマンド交通を充実させ既存公共交通と融合させる動きは、実は日本各地で進んでいる。いずれの施策も住民の理解と協力、行政の粘り強さが試されている。

公共交通を社会的インフラとして産官学民のすべてが連携して維持・発展させ馴染ませることで住みやすさ幸福度アップに繋げていく。魅力ある地域作りに今が最後のチャンスかもしれない。自分が、どう貢献していくかを再度考え始めるきっかけをもらえた。