役員コラム

2025.06.03

大阪・関西万博

㈱あさひ合同会計 取締役相談役 髙木 正男

なぜ、何のための開催か。税金の無駄遣い。開幕までに未完成。メタンガス騒動等々。ネガティブ話題満載で始まった万国博覧会。私も2月までは全く関心が無かった。行けば何が見られ感じられるか、開幕までメディアでの具体的発信はほとんど無かったから。

1970年の万博は日本の高度経済成長終盤。誰もが将来に夢を持って生き、まだ見ぬ世界への関心が高かった。私も中学一年で、何も分からないが広い世界と未来を感じたい時だった。3月に家族で、6月に中学の遠足で行った。もう一度行きたかったが夏休み以降は入場者の多さに圧されて結局2回に止まった。「夜間入場の直前は人気館も絶対空いているはずだ」という父の予想が当たり、中身は覚えてないのに米国館もソ連館も並ばずに入れた事だけは鮮明に記憶に残っている。そんな事もあって、2回の訪問でほとんどのパビリオンに入った。

今回も「折角行くならまだ関心が薄い時期に」と一週目の土曜に予約。ただ、12才と違い67才ではガツガツ回らず、ゆっくり感じるものを大事に、行ける範囲での回り方に変えた。事前予約は結局、国連だけ当選。その他は行き当たりばったりで並ぶ万博を覚悟した。フランス館と国連とコモンズC館を訪れ、それ以外は食事と大屋根リングを歩いて楽しんだ。

ウクライナは応援にどうしても訪問したかったのでコモンズC館へ。そこにはスロベニアも入っていた。豊かな自然の紹介と自転車が置いてあるだけのシンプルな展示。スロベニア人のコンパニオンは1人だけで、迷わず話かけた「タデイ・ポガチャルの母国ですよね?」「わー良くご存じですね」自転車ロードレース最高峰ツールドフランス3勝、2024年はツールに加えてジロデイタリアと世界選手権も勝ってトリプルクラウンに輝いた英雄だ。日本人に馴染は薄いが欧州では大谷選手以上の宇宙人的存在。スロベニアの人口は僅か2百万人だが、自然豊かな国土にスポーツを愛する国民性から世界一が出現した等々、話が弾んで気が付いた。ネットの時代、バーチャルで何でも知れる今、何のために会場へ足を運ぶのかの答えがそこにあった。リアルな世界でコミュニケーションから人と人とのふれあい肌感覚で分かり合う事だ。

話し合い解りあい相手の尊厳を重んじ互いに譲り合う心を持つ。狭い地球で人類の将来を考えれば戦争など起こらないはず。自分勝手でエゴ丸出しの人に「それは時代遅れですよ」と言える万博になれば良いと思った。