役員コラム
2025.04.07
義務を果たしても
~ オンラインカジノ~
㈱あさひ合同会計 代表取締役社⾧ 藤原 耕司
税理士事務所にとって年前半は最繁忙期。4 月以降も、3 月決算法人の対応に追われ、5 月まで忙しい日々が続くが、所得税等の確定申告が終了し、少し一息つける時期にさしかかった。
今年の確定申告期間中、印象に残った出来事といえば、芸能人やプロスポーツ選手らがオンラインカジノを利用していたことが発覚し、活動自粛や、なかには書類送検・解雇にまで至る事態となったというニュース。
思い返せば、2 年前の確定申告期間中、ある会社勤めの方から電話相談を受けたことがあった。その方とは面識がなかったが、相談内容は、副業として得たオンラインカジノの利益をどのように申告すべきかというもの。
結局、その方とのやり取りはその一度きりで、あさひ合同会計で申告手続きをすることはなかったが、恥ずかしながら当時、オンラインカジノに違法性があることを知らなかった。
もし今、オンラインカジノによる利益の申告依頼を受けたとしたら、どのように対応するのがよいだろうか。納税義務ということだけに目を向ければ、利益を申告し納税することは当然であり、その支援をすること自体に問題はない。ただ、倫理的には、手数料を受領し、申告手続きを通じて間接的に犯罪に関与することに葛藤を覚える。
これまで面識のない方であればお断りすると思うが、既存のお客様で、しかも違法性を知りながら利益を得ていた場合にはどう対応させていただくか。
幸いにも、これまで実際に申告手続きの依頼を受けたことはないが、私たちのような中小企業であっても、コンプライアンスが強く求められる昨今、お客様との関係、税務手続きの必要性だけを基準に判断することが妥当であるのか、非常に悩ましい。
ちなみにオンラインカジノによる利益は原則「一時所得」として計算するが、たとえ税金を納める義務は果たしても、その過程において正徳は得られない。
あさひ合同会計のお客様方を考えると想定外ではあるが、それでも道理にかなった行動とは何かを考える、確定申告明けの年度始め。