役員コラム

2025.03.17

金利のある世界に

㈱あさひ合同会計 取締役相談役 髙木 正男

 日銀は1月の金融政策決定会合で政策金利を引き上げた。昨年の3月と7月と合わせて三回各々0.25%ずつ上げた結果0.%程度となった。これは200810月以来16年ぶりの水準という。

 日銀の植田総裁は、前任の黒田総裁がアベノミクスに絡めて実施したマイナス金利という異次元金融緩和から、本来の金融政策が打てるプラス金利へ誘導する使命を負って就任した。金利がゼロかマイナスの世界にどっぷり浸かった国内感覚を正常に目覚めさせるのは容易でない。各方面への配慮、慎重かつ丁寧な説明を前後に重ねた上で行動しなければならない。現に7月の利上げでは内外の株価急落の洗礼を浴びた。その反省を活かし1月は大きな動揺なく実施できたように見える。

 今後の方向として、インフレ継続中に少なくとも1.0%までには引上げたい意向がくみ取れる。早々にドル/円は織り込む動きが見える。円安のままでは輸出は助かるが日本全体の財産は目減りする一方である。様々な要因が絡むため予測は難しいが、今夏と年末年始の二回の利上げで目標に向かうのではなかろうか。物価上昇を考慮した実質金利はまだマイナスで、タイミングとしては今しかない。

 私が銀行に就職した19804月の二年定期預金金利は8.0%だった。今の人には想像もつかない高金利。支店の定期預金係に配属されてすぐの月曜に金利が上がり、その日付で一斉に証書の書換作業が発生した。とんでもない多忙の経験は、近年物忘れが増えた私でも一生忘れない記憶の一つである。

 当時は公定歩合が存在し、変更になると全ての銀行が同時に金利変更した。今は自由競争でメガバンクは日銀発表と同時に預金も貸金も金利を変更する。他の銀行はしばらく間をおいての対応が多い。今回も中国銀行は33日から預金金利を変更した。既に普通預金金利が増えたと感じている方もいると思うが8月にはもっと実感されるだろう。

 国債の発行金利も上昇する。国債頼みのバラマキ政策は一段の財政悪化を招くのは明らか。ここまでにした過去の責任を問うのも解るが、世界に日本の信用低下が実感されてからでは間に合わない。選挙の事だけでなく真に日本の将来を考えた政治なら、我々はある程度の痛みも理解しないといけない。

 目の前の経営においては、金利上昇に一層の備えと心構えをお願いしたい。既に銀行から金利引上げ交渉を受けた方もおられる。なんとか金利 (人件費他物価も含め) 上昇分は、より粗利益を稼ぎ、さらにそれ以上儲けて借入返済圧縮ができればと願う。

 様々に発想を転換させて進まないといけない時代となった。