役員コラム

2024.10.07

読む

㈱あさひ合同会計 代表取締役社長 藤原 耕司 

 秋といえば読書の季節。活字は好きだし、普段から仕事に関係する書籍や定期刊行物に目を通す機会も多い。ただ、一般書や小説に没頭する時間は少なくなっている。読書家ではないが、仕事や日常に追われ、読書する余裕がないのが寂しい。

 書籍『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を手に取ってみた。著者の三宅香帆さんは、現代人が仕事に追われ読書ができなくなる理由を分析し、労働と読書の関係を歴史的に分析している。その中で、“全身全霊で働く”現代社会の価値観が、個人の読書時間を奪っていると述べる。確かにそうした一面はあるだろう。もちろんそれだけではなく、デジタルメディアやスマホ、SNSといった娯楽もあり、生活の多様化が進む中、ページをめくる行為は贅沢な時間になりつつあるのかも。

 「読む」といえば、「予想する」という別の意味もある。この秋は、国内では自民党総裁選挙や立憲民主党代表選挙(執筆時点ではいずれも立候補者が出揃った状況)、国外に目を向けるとアメリカ大統領選挙など、重要で興味深い政治イベントが控えている。それらの結果をあてることは難しい。しかし、その行く末が日常生活や経済(税制を含む)、会社経営に影響を与えるだろうし、その過程も含め関心を持ち、社会がどういった方向に進みそうか考えたい。

 「予想」よりもっと難しいのが「予知」。10月には「国際防災デー」がある(10月13日)。
災害予防や被害減少を目指し、世界各国で減災等への取り組みを振り返る日。日本において、この頃は秋雨前線による大雨のほか、南海トラフ等の巨大地震は時期を問わず発生する可能性がある。最新の科学技術でも災害発生を正確に予知できないが、それでも、防災・減災を実現するための知識や知恵を読書やメディアから得ることはできる。これもまた、読む、の一つの形だと思う。

 神様たちが出雲に集まる神無月。神様不在の地域で何事もおきませんようにと願いながら、出雲に行けば、諸々「読む」力を授けてもらえないだろうか、とぼんやり神頼みをしたくなる秋の夜長。短い時間でも読書を愉しみたい。