役員コラム
2024.08.08
音を磨く
㈱あさひ合同会計 取締役 今田 泉美
上皇ご夫妻の卒寿90歳を祝う音楽会が皇居内の音楽ホールで開催され、そこで日本を代表するジャズミュージシャン/サックス奏者の“ナベサダ”こと渡辺貞夫さんが演奏されたという先日のニュースに、思わずくぎ付けになりました。渡辺貞夫さんは上皇様と同じ昭和8年生まれの91歳。父も同じ年の生まれでした。
私は中高生時代、アルトサックスを吹いていました。コンクールで中国大会出場に命を懸けているような少々厳しい吹奏楽部だったので、「“ナベサダ”のように自然なビブラートで、きれいな音を追求するように」と言われ続け、私にできるわけもないのですが、毎日練習に明け暮れていました。
その1980年代当時、“ナベサダ”さんは資生堂ブラバスのCMに「カリフォルニア・シャワー」「オレンジ・エクスプレス」などの楽曲と共に、ご本人も草刈正雄さんと共演し魅力的な笑顔で人気を博していました。今風に言うとイケオジといった感じでしょうか。
私は演奏の勉強のため、高校1年生の時、生まれて初めて行ったコンサートが“ナベサダ”さんのライブでした。当時あこがれていた先輩と岡山市民会館に一緒に行ったという、甘酸っぱい思い出がよみがえります。とはいっても、ほとんど覚えていませんが……。
社会人になってからも、“ナベサダ”さんのコンサートは、屋外ライブも含め何度も足を運ばせていただきましたが、えも言われぬ柔らかさと伸びやかさのある上品な音は、素晴らしいものでした。卒寿を超えた今でもツアーをし、2時間のライブで19曲を披露していらっしゃるそうです。本当に奇跡だと思います。
「日課としては、朝5時に起きて散歩。朝食後に2時間くらい楽器の練習。そして、午後には1時間くらいウォーキングする途中でスクワットとかやっていますね。若い頃の自分の演奏を聴くと、元気が良いというか、かなり長いフレーズも吹いているんですが、今はさすがにそういうふうにはいかないですけど、毎日、音は磨いています。今が演奏していて一番楽しいです。」
ご自身が卒寿を迎えたときのインタビューです。今もなお、音を磨き続けているなんて素敵です。
父は30年ほど前の記録的な猛暑の年に亡くなりましたが、生きていれば91歳なんだなあと、感慨深い気持ちになりました。いつのまにか、父が亡くなった年齢に近くなった私ですが、与えられた賜物を活かし、自分自身という音を磨く練習を忘れてはいけないよと、このニュースを通して大切なメッセージをもらったような気がします。
今年も猛暑が続いていますが、父の命日には久しぶりに“ナベサダ”さんを聴きながら過ごすことにいたしましょう。