役員コラム
2024.03.25
乗り鉄
㈱あさひ合同会計 代表取締役会長 髙木 正男
乗り鉄を自称する私だが、乗車距離のほとんどは学生時代のもので、仕事を始めてからは僅かに楽しむ程度、残念ながら鉄道は移動手段になっていた。昨秋、久々にあった大学時代のサークル「旅と鉄道」のOB会で、仲間との会話に鉄分がよみがえってきた。
2月に妻と玉造温泉へ行った。目的地は温泉だが、私の目的は旧型やくもの乗り納めと木次線乗車であった。
やくもは4月から新型車両に変わるため、旧国鉄型381系での運行は残り僅か。岡山駅周辺で懐かしのカラーリングを見たりしていたが、乗車は久しぶり。奮発してパノラマグリーンに乗車。振り子式電車の揺れをしっかり吸収した乗り心地。いつから改良されていたのだろうか。しかし立って歩くと大きく揺れて、かつての乗り物酔いが思い出された。安来駅で赤銅色の新型やくも試運転とすれ違い、さらに進化した車両に早く乗りたい気持ちになった。
翌日は妻に無理を言って山陰・木次・芸備・伯備・山陽線経由と記された乗車券で、朝から晩まで鉄道に乗り通し。木次線は46年ぶり二度目の乗車。昭和の時代には陰陽連絡として賑わい、広島松江間に急行ちどりも走っていた。それが今では全線乗り通せる列車が一日一本しかない廃止目前の路線である。当日は一両に約40人乗車でほぼ満員。小学生から70才前後までの全員マニア風。立ったり座ったり、カメラを向けたり、ウイスキーを片手に乗りを楽しむ者も。
出雲坂根で構内に沸く延命の水を楽しんだ後は、いよいよ最大の見どころ三段式スイッチバック。標高564mから隣の三井野原(JR西日本最高地)まで一気に162mを上がるのに列車は後退前進を繰り返し登っていく。乗客は我を忘れて右往左往。
感動冷めやらぬうちに終点の備後落合へ到着。80㎞を3時間半もかけて走破。すっかり秘境駅になり下がった備後落合であるが、木次線と芸備線の広島・新見の折り返し、全6列車が発着するこの一時だけ、かつてのターミナルを彷彿させる賑わいを見せる。日曜だからかいずれも満員で廃止前乗車客が既に増加している。普段からこの賑わいなら「再構築協議会」など笑い飛ばせるのに。
今年、わが社は繁忙期2,3月の土曜を出勤とし、4,6,7月の金曜に休みをとるカレンダーを試行する。それを使って平日ローカル線の現況を見てみたい。
それにしても山間部のどこへ行っても立派な道路や橋が整備されている。自動車への公的支出に比べ鉄道への支出はどうか。鉄路廃止に反対する自治体には今までの施策を見つめ直した上で、交通弱者への配慮を含め公共交通機関の在り方を真摯に協議していただきたいと思った。