役員コラム
2023.10.04
ここだけの話
㈱あさひ合同会計 代表取締役所長 藤原 耕司
田舎育ちの無知・無垢だった私は、小さい頃、ツツジの花の少し甘い蜜を吸っていた。ツツジには毒が含まれる品種があり、口にしないほうが良いという甘くない現実を知ったのは、随分あとになってから。情報化社会の今なら、事前に検索して、未然に身の回りの危険を防げたかもしれない。
情報があふれる現代でも、ひみつはみつの味、秘密は魅力的な一面がある。気の置けない友人や、仲間内では“ここだけの話”は盛り上がる。ただ、度が過ぎると信用されなくなる。仕事も同じで、その場では関係が近くなった気がしても、それは錯覚で、秘密を洩らした毒がまわっている。なお、某芸能事務所のような秘めごとはあってはならないが。
どの仕事にもある守秘義務、私たちの業務におけるその特徴としては、お金を始めとする資産、業績や収入、人間関係、家族関係に纏わるものが多いこと。また、経営者として、社員から個人的な事情を背景にした相談を受けることもある。
社外はもちろん社内であっても、相談内容等の核心部分は、関係者以外の耳に入ることが無いよう気をつける。良い内容や常識的に問題ないものは別にして、見聞きしたものや、相談内容を話題にされることを良しとする方はいない。口にして良いかどうかの判断基準は、その方に不利益が生じるかどうかではない。それが矜持でもあり、墓場まで持っていくものは増え続ける。
もっとも、通常業務に関するオープンな情報共有は、健全な組織成長に欠かせないし、無関心や“守秘義務”を口実に必要な情報が適切なタイミングで共有されないと、空気が淀み、不正行為につながることもある。
秘密は情報や知識を守り、信頼関係を築くために必要であり、あわせて、透明性と誠実さを大切にするバランスを心がけたい。そして、これからも多くの方から真に相談を受け続けられる存在、組織でありたいと思う。
叶うなら、デジタル化が進むなか、墓場も容量無制限のクラウドに移行できればなぁ、と願わずにはいられない。