役員コラム
2023.09.05
ロボット手術
㈱あさひ合同会計 代表取締役会長 髙木 正男
がんゲノム医療とロボット手術について、消化器がん診療の最前線で活躍されている岡山大学病院の先生の話を聞く機会があった。3年前に胃がんを宣告された私だが、早期発見のおかげで内視鏡手術だけで完治できた。がんと言われてもダメージもなく、今まで通りの生活ができるとは。早期発見に導いてくれた先生方と現代医学に感謝した者にとって興味深い内容だった。
今までの投薬療法では「コンパニオン診断」といって、その人に合う薬かどうか一つずつ試して合わなかったら次を試すを繰り返すのが、がん治療の常識であった。それが「がん遺伝子パネル検査」で一度に調べて、その人に効く抗がん剤を効率よく投与できるようになるという。身体への負担や時間との闘いの解決になるだろう。現状はまだ誰にでも適用できるわけではないそうだが、間違いなく光が見えてきたと感じた。今度お世話になる頃には保険診療が可能で、できれば事前に効く薬が判っている時代になっていたら嬉しい。
ロボット手術の話は、開腹の昭和・内視鏡の平成・ロボットの令和ということらしい。手振れの心配が無く、傷口が小さいので術後の回復が早い。将来は遠隔地からも可能になるという。手術を怖がる必要が無い時代に早くなって欲しい。
ロボットを人間が操るのか、操られるのか、この問題はどこの業界においても目前の課題である。AIやロボットの発展は間違いなく有難いが、そこで人間がやる事は何か。この講演でも「イレギュラーに備えるとかロボットが対処不能になった時、最後の砦が人間だ」と言われていた。AIが無い時代に修行を積んで熟練された方々にはそれができそうだが、AI時代に育った人にその修行をする時間はあるのだろうか。
税理士の世界では、私の先生の時代はペンで記帳を繰り返し、私の時代は手入力を繰り返すことで修練し様々な問題に気付く能力が養われ、成長する時間が与えられていた。これからの人は最初からAIがしてくれて修練する時間が無い間にAIを超えるイレギュラーに備えられなければいけない。私には考えられない事ができないと人間としての存在価値が認められないのだろうか。
この事象について数年前から心配に思ってきたが、将棋の藤井聡太七冠の逸話が教えてくれた。AIが短時間では候補にも挙がらなかった手を公式戦の局面で打ち、勝ちに繋げた。あとで再度時間をかけてAIに考えさせたらその手が最善手と出た、という。AIを使いこなして修練すれば人間の想像力は無限なのかもしれない。誰もが藤井聡太になれる時代? 人間の力に期待したい。