役員コラム
2023.04.05
WBCの運営
㈱あさひ合同会計 代表取締役所長 藤原 耕司
野球の世界大会WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)、準決勝は劇的な展開だったが、決勝も予めシナリオが用意されていたのだろうか。僅差での日本勝利とあわせ、締めくくりは所属球団の同僚であり、日本とアメリカ、それぞれの象徴でもある大谷選手とトラウト選手の対戦。何かが作用した必然、と思いたくなる。偶然の巡りあわせとは分かっているが。
そのWBCについて、日本プロ野球選手会のホームページでは、運営上の問題点が指摘されている。WBCは、MLB(米メジャーリーグ機構)とMLBの選手会により設立された会社WBCI(WBCインク)が運営主体。日本企業のスポンサー料も、グッズの肖像権も帰属はWBCI。参加する各国への収益配分はあるが、利益の半分以上はWBCIが独占している。IT分野はもちろん、スポーツにおいてもビジネスセンスが優れ、仕組みづくりが上手い。
また、そうした収益構造の問題ではないが、今大会では、準決勝のアメリカ戦の組み合わせについて、不可解な変更が急遽あった。
過去1年間でアメリカと中国間の貿易額は過去最高を更新したと、先月報じられた。覇権争いから、軍事やハイテク分野を中心に激しい対立が続くが、二国間の経済の結びつきは深い。アメリカが主導する、ハイテク分野に関する半導体関連の輸出規制については、日本に足並みを揃えるよう要請はあるが、大国となった中国の意趣返しで、日本が被る不利益はどの程度あるのだろうか。両大国ともしたたかだ。アメリカにも絶対の正義はないし、日本の国益が気になる。
運営に課題があるWBCだが、今大会で注目を集めた日本代表ヌートバ―選手のように、国籍は柔軟に設定され(この辺りも上手い)、メジャーリーグで活躍する選手が各国にちらばり、また、有名選手の出場も増え、エンターテインメントとしては素晴らしい。競技レベル向上や、世界中に野球の裾野が広がることで、日本が恩恵を受けることもあるだろう。怪我のリスクを取りながら、超一流選手たちがお金も超えた一つの目標に向かって真摯に取り組む姿勢が、未来を担う子どもたちへ与える影響は計り知れない。
だからこそ、今回の結果が、WBC運営に関する日本の交渉力にもつながって欲しいと願う。日本の存在感が、今大会を通じてさらにあがったのは間違いなく、今後に期待したい。