役員コラム

2021.12.06

ガチャ

㈱あさひ合同会計 副所長 藤原 耕司

今年印象に残った言葉の一つが「親ガチャ」。親選びが外れたと、子が嘆く。
カプセルに入ったおもちゃの自動販売機ガチャガチャや、スマホゲームのガチャが語源らしい。
親ガチャの他にも、学校ガチャ、会社ガチャ、上司ガチャなど色々ある。
それらと反対に、子ガチャ、生徒ガチャ、部下ガチャもある。
人生は運や縁に左右されるものなので、マスコミが取り上げる程でもないと思うが、誰かが生み出すそうした造語は面白い。

今年印象に残った書籍の一つが「実力も運のうち、能力主義は正義か」。
米ハーバード大学の教授である著者が、同大学で学ぶ学生の多くは「入学は自分の努力と勤勉の成果」と思い、「そうした努力が報いられるのが平等な世界」と考える能力主義を問う。
努力や勤勉は称賛されるべきだが、そもそもそうした資質が身につく環境は、幼少の頃から用意されていることが多く、そのことを自覚しなければ驕りにつながり、行き過ぎた能力主義が格差と分断を招く、という内容。

日本でも東大生家族の世帯年収が高いことはよく知られた事実。
仕事柄相談を受けることも多いが、富裕層の方は子どもや孫に、早くから学資や生活費を十分かけ、環境を整えることができる(結果として、将来の相続税も減り一石二鳥)。
お膳立てがあるから人生が順風満帆ということでもないが、それでも出発地点が違う、持つものと持たざるものの差を税務の実務を通して実感し、複雑な気持ちになることも。
そういえば、人気の中学受験漫画で主人公が生徒にかけるセリフは「君たちが合格できたのは、父親の経済力(と母親の狂気)」。
親ガチャが話題になるのも、日本でも格差とその固定化が進んでいるということなのだろう。

今年も残り僅か。
丑年にちなみ、少しずつでもできることに取り組むということで、今年のテーマは牛歩も千里。
振り返ると、ゆっくりでも停滞せず、何かしら前進できた1年だった。
"ついていない"時もあるが、こうして日々生活でき、仕事があることを当たり前と思わず、社会に関心を持ちながら来年も歩みたい。
本年もあさひ合同会計グループが大変お世話になり、誠にありがとうございました。
御礼とあわせ、皆さまがよいお年を迎えられるよう、心からお祈り申し上げます。