役員コラム

2020.06.08

”おつやごめ”

㈱あさひ合同会計 副所長 藤原 耕司

実家のある地域での珍しい風習。
毎月27日、小学生が手分けをして地域の家々をまわり、小銭を集める際にかける言葉。
“おつやごめ、集めにきました”

つやは葬式の通夜ではない。
平安時代、貴族が寺社に参籠して祈願したことを「つや」と呼んでいたらしい。

いただける小銭は毎月決まった額ではなく、その方の気持ちと、その時の財布次第。
運良く、年に何回かは小銭ではなく千円札にめぐりあう。
運悪く、不在の場合は落胆。
当時、インターフォンがない家のほうが多く、一度呼びかけ反応がなくても、何度か大きな声で繰り返すと、気がついて出てきてもらえることもあった。
あきらめない粘り腰(自称)は、この時培ったものかもしれない。

集めた小銭は、荒神さま(かまどの神様)が祀られている小さなほこらに持ち寄る。
そこで、6年生が学年ごとに傾斜をかけたお金を皆に分配する。
記憶では、平均して、6年生は一人500円前後、一年生は100円くらい。
6年生が分配計算をしている間、1年生から5年生は、決まったお経を繰り返し唱える。
本来は、地域の家々が災難にあわないように祈る。
ただ、小学生なので、心の中は「お小遣いありがたや、ありがたや・・・」。
言葉通り“現金”なものだ。

それでもお経はまだ頭に残っているし、信仰心が強いとは言えない今も、当時のことを思い出すと、なぜか心が落ちつくのが不思議だ。

ちなみに、私が小学生のころ、参加するのは男子に限られていたが、今は性別を問わない。
集めていたものも昔はお米だったというが、今は小銭(将来はキャッシュレス!?)。
自然と形を変えながら、伝統がつながっていく。

今では全校生徒数が約80名の小学校区。その中でこの風習がある地域の小学生は10名弱。
いつまで続くのかわからないが、いつまでも残って欲しい。
その一助となるよう、実家に寄った際、千円札を置いておこうか。
いや、そういうことではないか・・・。
本質からずれた考え方は“厳禁”。