役員コラム

2018.10.01

匍匐前進

㈱あさひ合同会計 取締役 古川 達也

 大水害、台風、地震で被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 この夏、日本列島は異常な災害が多発しました。これまで、天災被害を受けることが少なかった地域にも大きな爪痕を残しています。毎日のように報道される『過去例を見ない』、『数十年に一度』などの言い回し。命に危険を及ぼすような猛暑・大雨による河川氾濫・台風による暴風雨・大地震、これほど連続する自然災害に接した年は初めてです。

 先日、総社市から高梁川を渡り倉敷市真備町を抜け、長男が住んでいる矢掛町まで行きました。子供の発表会でお世話になった、マービーふれあいセンターや真備中学校前の井原鉄道の高架柱に描かれた見事な絵など、水害前の明るい雰囲気だった真備町を知っているだけに、被災後の町の重苦しさには心が痛みました。窓を外してしまっている家々に人々の生活の気配はなく、夜は真っ暗な路地。この地が、元の状況を取り戻すための時間が想像できませんでした。

 ある日突然、これまで当たり前だった生活が一変するような状況に即座に対応できる人は、そう多くはないでしょう。ただ、時間をかけながらでも、前に向かっていると信じて進んできた人類の歴史を踏襲する以外、方法がないように思いました。

 8月の終わりの日曜日、立ち上がった瞬間、左耳に膜が張ったように感じ、よく聞こえなくなりました。耳の奥では、変な音が鳴り響いています。これ、ゼッタイ変。今まで経験したことのない状況にビビった私は、翌日耳鼻科に行き、症状を聞いていただきました。耳鼻科の先生は聴力検査後、『突発性難聴』ですという診断を下されました。

 この病気は、40代・50代の男性に発症することが多いそうですが発生原因は不明で、確実といえる治療法も確立されていないという話。治療としては、これまで効果があるとされている方法で行うということでした。耳が片方聞こえなくなって困ったことは、人の話が聞き取りづらいことよりも、運転すら怖いようなバランス感覚の悪さの方でした。突発的に発症したのなら、突発的に寛解すればいいのにとも思いますが、現状を受け入れる以外ありません。

 今も耳は治ってはいませんが、不思議なもので日にちが経つにつれ身体の方が順応してきています。現状を嘆き十分に落ち込んだあとは、エネルギーの貯まりを待って、前進する力にしようと思います。沼を這うような匍匐前進でも、前向きだと信じます。

 この話を友人にすると、「人生には波がある。良い時は大きく乗ればいい。悪い時は、良い波が来るまで辛抱してやり過ごそうや」と言われました。私には、とてもありがたい言葉でした。