役員コラム
2018.09.01
ペイフォワード
㈱あさひ合同会計 取締役 今田 泉美
この夏、全国から多くのボランティアの方が真備町に来られているニュースを見ました。「大勢の人に震災の時にお世話になったから、今度は僕たちができることをする番です。」これは、熊本から来たボランティアの方の言葉です。
この言葉を聞いて、私は「ペイフォワード」という映画を思い出しました。
人は他人から厚意を受けた場合、その相手にお返しをしようとします。そうすると、その厚意は当事者間のみで完結して終わってしまいます。
しかし、この厚意を受けた相手に返すのではなく、次の人に別の形で渡していく。それも、ひとりの人が別の3人に渡していくのです。「お礼なら、次の人へ渡してください」といって恩送りをするのです。
もう、この話は時効だと思いますが、平成に入ってすぐの頃、事務所は厳しい局面に立たされ10年に及ぶ裁判をしたことがあります。私も巻き込まれ、第2審では私が証言台に立つことになりました。信じて裁判をしていたとはいえ、長い年月の間には「こんなはずではなかった」「なぜ、私が」というネガティブな思いが湧いてきて、先の見えない絶望感で自分を見失うこともたびたびありました。
それでも、気持ちを何とか枯らすことなくやってこられたのは、たくさんの人の御厚意があったからでした。それは直接的なものだけでなく、間接的なものも含めてです。そのおかげで、信じられないことですが逆転勝訴という結果を受け取ることができたのです。20年近くたった今でも、あれは奇跡をいただいたとしか考えられません。
この奇跡は誰かひとりの卓越した力が成し遂げたことなのでしょうか?それはあり得ません。むしろ、ひとりずつの力はささやかなものだったと思います。「もう無理」と思った後のちょっとした踏ん張り、少しでも力になりたい、といった小さな厚意が集結し、目には見えませんが、いつの間にか大きな力となって奇跡を起こしたのだと思います。この時の恩は、いくら次に渡しても渡し足りることはないでしょう。
「ペイフォワード」
わたしたちはみんな例外なく人から厚意を受けています。
そのお礼を次の人に別の形で渡していくのです。それも3人に渡して、広げて、継続していけば、いつか素晴らしい力となって誰かを窮地から助けることができるかもしれません。ほんの少しだけ勇気を持って、誰かのために行動してみませんか?
西日本豪雨で被災された方々にお見舞いを申し上げます。1日も早く平穏な生活に戻ることができますようお祈りいたしております。