役員コラム

2018.06.01

同級生に叱られる


                                             
 

㈱あさひ合同会計 取締役 古川 達也

 私は、今年55歳になります。新社会人となった時代では定年を迎える年なのですが、まだまだ未熟で課題の多い人生です。同級生との集いの場では、役職定年や退職後の暮らしについての話など、若い頃には思いもしなかった話題が出ます。皆一様に、社会人として高い山にぶつかり、谷底に落ちといった一通りの通過儀礼を経験しているようです。

 年齢を重ねるにつれ、正面から叱られるような機会は減っていくものです。理由は、大きく2つでしょうか。1つ目は、これまでの経験を活かすよう学習した結果、叱られるような失敗をしなかったという事。これが全てならば幸せなのですが、2つ目は厄介です。それなりの年齢になると、接する相手が自分よりも年少者となり、所属組織内では上司と部下という図式になります。上司がおかしくても、立場上、意見することができなかったという事は、よく聞く話です。「意見しても無駄だから…、聞く耳を持っていないから…。」このような状態では、「それ、ダメです」と言われるかわりに、もう放っておこうという事になります。また、経験則から思考が硬直化し、柔軟性が失われるという症状が登場しはじめます。そうでなくても最近の社会環境はあまりにも性急に変化しています。私も同級生も新入社員時代、上司や先輩から「もう来なくていい!」と罵られ、それが普通であるかのように育てられました。現在、上司が部下にこのような発言をすると大変なことになるのは、皆さん周知の事実です。変化に対応できなかった政治家や高級官僚や芸能人はニュースになりますが、一般企業ではひっそりと職場を去ることになります。

 同級生から叱られた話をします。法人設立したいと言い出した友人から、登記関係・届出関係・経営計画書などの説明をして欲しいと言われました。設立手続きよりもその先の継続経営の方がよっぽど大仕事であることを経験上十分に承知している私は、設立から届出・決算に至る一連の書類を整理して事前に渡しておきました。その後の席で、「この前渡した書類読んだ?」、「まだ…。」大仕事の前段階ごときでという思いと、同級生という気安さもあり、厳しい口調で「何やっとん、これから起業するんじゃろ」と言い放ち、新商売についても追い詰めるような状態に持ち込んでしまいました。同席した同級生の一人が冷静に、「おい古川。上から目線で○○を非難するな。無自覚で人を指さすな。理詰めで逃げ場のない状態を作るな。逃げ場を全てつぶすとちゃぶ台をひっくり返すしかなくなるからな。それに、その悪い目つきと言い方を会社の子にやってみ、十分立派なパワハラで。」同級生に叱られ、教え諭されてから、無意識に指をさしていた事に気づきました。この同級生もいろいろやらかして、成長しての今日があるのだろうという事も容易に想像できました。私は「悪かった。教えてくれてありがとう。今後気をつけます。」と素直な気持ちで謝罪しました。そして「指さしとったの全然自覚してなかった。こんな時どうする?」と問いました。同級生は、「とにかく意識すること。俺は、やってるで。」と、当たり前に答えました。

 武田鉄矢の「母に捧げるバラード」に「人を指さすな、悪いという指2本は人の方を向いていても、残りの3本は自分の方を向いている」というような一節があります。遅ればせながら勉強しました。この文章をお読み下さった皆様、私が今後もこのようなことをやらかしていましたら、どなたによらず、厳しくお叱り下さいますよう、心よりお願いを申し上げます。