役員コラム

2017.04.01

アンサンブル

 

㈱あさひ合同会計 取締役 中山 加壽子 

 趣味でリコーダーのアンサンブルを始めて今年で10年になる。
 出会いは学生時代、外国人の奥さん方が集まって練習をする会に友人に誘われて1度だけ参加させてもらったことがある。それまでは「所詮、小学校の縦笛・・」と大した興味もなかったが、雰囲気のある洋館のほの暗いランプの明かりのもと、何人かで合わせて奏でるバロック音楽の調べはとても魅力的で、私を一挙に中世ヨーロッパの世界に連れていってくれた。
  社会人になってからは縁がなかったが、10年前、家の近くの公民館で講座を受けたのをきっかけに気の合う仲間が定期的に集まって練習をするようになった。

 リコーダーには15センチほどの小さなもの(昔小鳥に歌を覚えさせるために使われていた)から背の高さよりも大きいものまでたくさんの種類がある。私たちが演奏するのは主にソプラノ、アルト、テナー、バスの4種類で、木でできたリコーダーだ。素材はメープル(かえで)、チェリー、ペアーウッド(梨)、つげ、オリーブ、黒檀など。木によって音色は様々だが、早く育つ軽い木は柔らかい音がし、黒檀など育つのに長い年月のかかる重い木は硬質のよくひびく音がする。

 リコーダーは単純な楽器で誰でも簡単に音を出すことができるが、自然素材であるだけに温度、湿度、吹き方などで音の高さ、音色が微妙に変わる。ソロならば自分のペースで吹けるのだが、アンサンブルとなるとそうは行かない。人の音を聞きながら、管の長さや息の強さなど演奏をしつつ瞬時に見極めてお互いに音を合わせていくことになる。

 アンサンブルを始めたころはソプラノやアルトなどメロディーを奏でる目立つパートが吹きたかったものだ。メロディーを割り当てられるととてもうれしく、きれいな音を出そうと一生懸命吹いた。のちに何年かの経験を経て気づかされるのだが、張り切って吹くと音が微妙に高くなり自分の音だけ浮いてしまう。また自分の音を際立たせたいと欲を出すと「品のない」音となってしまう。心を合わせて人の音をよく聞きそれに溶け込むように自分を表現して初めて4本の音でも1つ音楽となって聞こえてくる。

 最近は、テナーやバスなど低い音の楽器が好きになった。低い音の楽器は肺活量がいる分、自分自身が楽器になったような気がする。メロディーを奏でることはほとんどないが、目立たないところで音楽全体を下支えしているような満足感がある。1本で練習していてもつまらない。他の人と心を合わせ、ばらばらだった音が一つの音楽になっていく過程が醍醐味なのだろうと思う。

 税理士という仕事はメロディーを担当することはまずない。お客様が奏でるメロディーに寄り添い、心を合わせて一つの事をいっしょに成し遂げていくことができればこの上ない喜びである。