役員コラム

2016.03.01

最後の晩餐

ネットリンクス㈱ 代表取締役 前田 洋一

 夫婦喧嘩をした。
 誰の目にも、妻に責任があるのは明らかな喧嘩だった。昨日の晩御飯が原因だったので、今夜から家では晩御飯は食べないと決心した。
 あまりに腹がたったので、「昨日はごめんなさい。」という妻の言葉に、まったく耳を貸さず無言で家を出て会社に向かった。こういう日は、どうも気が重い。従業員との朝の挨拶もどこかぎこちない。

 浮かない気分でお客様の会社を訪問した。訪問した会社は食品製造をしている。社長が言った。
 「朝食をテーマに教室をすることになった。テレビを観ながらだったり、新聞を読みながらではなく、家族が集まって会話をしながらの朝食を提案したい。その朝食の場が家族の最後の会話の場になることだってあるんだから。」と言って、東日本大震災のある話をしてくれた。

 ある日、娘と喧嘩をして口を利かなかった母親がいた。娘は「行ってきます。」と言って家を出たが、その母親は娘のあいさつを無視した。そして、娘は津波にのまれ再び家に帰ってくることはなかった。その母親はこの朝の事を一生後悔し続けるだろう。

 えっ。社長さん。我が家の今朝の喧嘩を見てたんですか?
 おーい、妻よ!無事に生きているか?

 あまりにもタイムリーな話題にビックリすると同時に、なんだか必然性を感じた。今朝の喧嘩は、「考え方を少し変えたほうが良いよ。」と教えてくれるためのモノだったのかもしれない。
 神の教示だと思い実践していかねばならない。もちろん、その日の夜は、妻の手料理を美味しくいただいた。

  一日、一日を大切に一生懸命生きる。
 明日が来るかどうかなんてわからない。今日が最後かもしれない。この人と会うのも最後かもしれない。この食事が最後の晩餐かもしれない。こう思うと、目の前の課題に全力で取り組むことができる。

 朝、起きたらすぐに妻に「おはようございます」と挨拶をする。家を出るときには、大きな声で「行ってきます」と。この事は一日も絶やしてはいけないと心に誓う。

 夫婦喧嘩に限らず、他人と喧嘩をすることはこの先もあるだろう。これからは先に謝ろうと思う。争いは早めに解決したほうが良い。あの母親のように、後悔する人生を送ってはならない。