役員コラム

2015.06.01

仙 台

ネットリンクス㈱ 代表取締役 前田 洋一 

 震災後、何度か訪れた東北を初めて妻と一緒に訪ねた。
 東北には、どうしても妻に見せたい光景があった。どうしても妻に会わせたい人がいた。どうしても妻に聞いてほしい話があった。今の東北を妻と一緒に訪ねたかった。
 津波によるがれきの山はすでに撤去されているが、被災者たちの心の中には未だにがれきの山が片づけられずに残っている気がする。日頃は何もなかったかのように振る舞っているが、私たちにあの日の事を目に涙を浮かべながら話してくれる被災者の方々は、たぶん一生心に闇を背負って生きていくのだろう。妻にとっても、人生についてもう一度真剣に考える事が出来た良い旅になったと思える。

 宿泊は仙台駅前のホテルにした。この日は妻の誕生日だったので、リクエストの仙台名物せりしゃぶでお祝いをした。お酒が美味しかったので、二次会にバーに行って飲みなおそうという事になった。目の前にPARCOがある。何か良い情報がないかと入ってみた。入り口の近くにスクラブのデモをしているショップがあったので、試しに手を洗ってみた。店員の女の子の笑顔が素敵で明るく気持ち良い接客だったので、岡山でも買うことのできるそのスクラブを購入した。商品の購入動機に「誰から買うか」という要素はとても大きいなと再考した。
 ついでに、その店員に良いバーを教えてもらうことにした。少しわかりにくいけれども、自分が大好きなお店なのでぜひ行ってみてほしいと言われ、紹介されたお店に向かった。看板も出ていないそのバーを、何とか探して行ってみた。さすがに人気のお店。満員で入店できなかった。
 違う店を探そうと外に出た私たちをオーナーの方が追いかけてきてくれた。「どんなお店をお探しですか?」と尋ねてくれた。「ワインが飲める落ち着いた店を探しています。」という私たちの言葉にすぐに知り合いの店に連絡をしてくれて、歩いて5分くらいのそのお店まで満員のお店をほったらかしてまで、一緒について来てくれた。案内されたお店もとても素敵なお店で店主との会話も楽しく、その夜は充実した時間を過ごすことが出来た。繁盛店のオーナーだからこそ出来るおもてなし。とても気持ちの良い出来事だった。いっぺんに仙台が好きになった。

 翌日、PARCOのショップに出かけた。昨日の女の子がすぐに笑顔でやってきたので、昨夜のお礼を言った。「分かりにくいお店を紹介したので、とても心配だったんです。連絡先を聞いておけば良かったなあとか、仕事を少し早めに切り上げて一緒に飲みに行けば良かったなあとか思ってたんです。仙台で楽しい時間を過ごせてもらえたなら本当にうれしいです。」ええ子じゃ。おじさんは感動したよ。

 人を感動させる接客・おもてなし。それは、もちろんマニュアル通りの接客などではなく、お客様と店員という立場を超えて一人の他人に喜んでもらいたいと思い素直に行動する事。今回の旅はそのことを気付かせてくれた気持ちの良い旅だった。また、近いうちに仙台に行ってみたい。