役員コラム

2015.08.01

変革と不変の選択

㈱あさひ合同会計 取締役 古川 達也 

 新聞やテレビで、大手老舗企業の事業不振や再建中というニュースを見ない日はありません。業種・業態を問わず、企業経営は非常に厳しく、難しいものだと思い知らされます。
 お客様の経営の一助になればと考え、「平成6年新春レポート」を紹介します。これは、弊社創業者が執筆し、同年の正月にお客様に配布させていただいた、全4章4ページもののレポートでした。平成6年当時、景気は沈み込み、先行きの不透明さから、弊社もお客様も不安感でいっぱいでした。後の研究で、バブル経済が崩壊したのは、平成3年2月と定義されたので、「失われた20年」が始まったばかりの混乱期に執筆しています。当時と現在の経済環境の違いはありますが、いつの時代でも、どんな世の中でも、変わることのない真理があるように思います。

Ⅰ.はじめに
  私達は、“平和”と“安定”と“繁栄”になれすぎて、その一つでも欠けた社会で生きてゆく気力も技術も身につけていない。
  今後何年間か続くであろう凄絶な時代は生き残りをかけた持久戦であり、神経戦となる。皆様と共に頑張り、日々が厳しくとも楽しいものであることを念願してやまない。

Ⅱ.覚悟
  孫子の兵法では、戦いにあたり周到な準備である「そなえ」を大事にしている。この大変革の時代に、心の準備である「覚悟」をかためる必要がある。
  (1)不安定を恐れない
   私達は安定と連続性に安住し、現在より少し良い状態の未来が連続しているという観念をあたかも宇宙の法則であるがごとく信奉しているが、安定の時代は歴史上まれなことである。人為的な社会システムの不安定こそ自然の法則である。

  (2)自由に生きる
   安定を失った社会は、混乱し、生活しにくい困難な時代だと言える。しかし、発想を逆転させれば、新しい秩序と倫理の確立に誰でも参画でき、無人の野を行く軽やかさを実感できる自由な時代かもしれない。ただ、私達は自由に考え自由に行動する能力と勇気に欠けているために「自由からの逃走」をしがちである。

  (3)平等主義を排す
   今以上に進歩するための効率性をかけた競争があり、結果としての勝者と敗者があるならば、そのことに手ごころを加える必要は無い。闘争心を燃やして生きてゆきたい。

  (4)楽しむ
   来年は、どんな正月になるか想像もつかないが、それを不安と受け取らず、ワクワクするような喜びとして受け取りたい。人類の歴史上最大級の激動の時代を生きられることに感謝し、行く末を見届けたいと思う。 

  (5)具体的対応策を
   今は情緒的な対応が許される時代ではなく、予測不能の中で大胆に仮説を立て、仮に誤りがあっても具体策を実行していかなければならない。 

 頁数の制約から、経営者の心の部分を重視した前半の1~2章を要約しました。経営環境を経営者単独で動かすことはできませんが、自分が立てた旗を守り抜くことは、経営者自身でなければできません。あの時代を乗り越えて今日に至っておられる皆様のさらなる発展を心より祈念いたします。