役員コラム
2015.11.01
パチパチはん
ネットリンクス㈱ 代表取締役 前田 洋一
とある会の大会に参加するため、石川県の輪島に出かけた。NHKの朝ドラ「まれ」の舞台となった街並みを走ってみる。主人公のまれが開業しているケーキ屋を探す。ケーキ屋らしきものは見つからず、旅館の仲居さんに聞いたら、「そりゃあかんわ。ドラマの中のお話で、現実とは違うさけ。」との事。
京都の女子大で情報メディア学科の教授をしている同級生がいる。彼の朝ドラに関する論評が面白い。【なんだかんだ言いながら、観てしまう。それが「朝ドラ」だと思う。言い換えれば、朝ドラでなければ観ない、そんな作品にも時に出会う。】
残念ながら、私にとって「まれ」はそういう作品であった。
実際の人物を主人公にしていた「花子とアン」「マッサン」の二作は、なんだかんだどころか、毎朝の欠かせない楽しみになっていた。事実は小説よりも奇なり。とは良く言ったものだ。
講演会に行くことがある。立派なコンサルタントや評論家の話よりも経営者の話を聞くのが面白い。他人が思いつかない優れたビジネスモデルを考えだし、卓越した営業能力と執念ともいえる行動力で事業を成功に導いていく。そういう話を聞くだけで勇気をもらうことができる。
10月から新しい朝ドラ「あさが来た」が始まった。モデルは大同生命の創始者の広岡浅子。実際の経営者の物語の登場に、半年ぶりに毎日ワクワクした朝を迎えている。京都の大きな商家に産まれ「女子に学問は不要」と言われ浅子は育った。幼少のころ、女子が触ってはいけない算盤に興味を持ち「パチパチはん」と呼んで振り回したり、上に乗って遊んでいて父親から叱られる場面があった。
自分の子供のころを思い出した。私も商売人の家に産まれ、小さいころの遊び道具の一つが算盤だった。そり代わりに滑って遊んでいて、よく叱られたものだ。私の実家は営業戦略を誤ったために、その後倒産してしまったが、家業では必要のなくなった算盤は、私のどんな扱いをしても叱られることもない遊び道具であり続けた。
経営者にとって正しい戦略を策定することが最も重要なことだ。経理業務など算盤勘定自体は、経営全体の割合から言えば一割くらいの重要性しかないかもしれないが、私はお客様に「パチパチはん」に基づいた指導を行っていきたい。会社を繁栄させるため、経営者と一緒になって、数字をもとに分析を行い、次の行動計画を練っていく。そんなお手伝いをすることが私の使命だ。どんどん背中を押したい。失敗をおそれず行動しよう。「九転十起」を座右の銘にされた広岡浅子さんを見習って。