役員コラム

2014.06.01

若葉のひとへ

㈱あさひ合同会計 取締役 今田 泉美

 この時期になると、濃紺スーツを着た若者たちを街でよく見かける。
 この近くで、新入社員向けのセミナーでも開催されるのか、または就活中の学生なのだろうか。若葉のようなひとたちがまぶしく見える。

 私が就活を始めた年の春。大学の就職指導部の壁に求人票が一斉に貼り出された。長い廊下の壁一面に貼られた短冊のような求人票。上下を画びょうで止めてはいるが、風に吹かれて、たくさんの短冊はひらひらと音をたてていた。
 その中に一枚だけ、妙に光る短冊があった。手前から順番に見ていくつもりなのに、どうしてもその光ってみえる短冊が気になってしかたがなかった。それがこの事務所だ。

 私がまだ若葉の新人だった頃のこと。弊社は「岡山孫子経営研究会」を開催していた。『リーダーシップ孫子』の著者である、今は亡き武岡淳彦先生を東京から毎月お招きし、顧問先のお客様とともに私たちも一緒に「孫子の兵法に学ぶリーダーシップ」について勉強していた。
 あるとき、窮地に立った時の身の処し方はどうしたらいいのかを武岡先生にお尋ねしたことがある。
 「ピンチはチャンス。それにつきます。付け加えるとしたら、目に見えないものの加護を信じることです。」
 リーダーとして、最大の識能は判断力と指導力である。
 判断力というのは、状況判断がよくできるということ。状況を把握してその状況においていかなる手を打つかということ。この打つ手を考えるときにヒントとなるのは、自然界の法則、天の定めた原理原則である。
 指導力を身につけるには組織の本質を知り、人間の本質を知ること。人間は追い詰められた状況におかれたとき、初めて本気になって火事場の馬鹿力を発揮する。リーダーも、部下も同じこと。火事場の馬鹿力とは潜在能力と言い換えてもよく、その潜在能力をいかに引き出すか、それがリーダーの指導力だと孫子は教えている、と。
 その言葉で、私たちは意を強くした。ピンチがチャンスに変わるまで、胆力をもって何事もやっていくだけだ。そうやって粘り強く乗り越えてきた。
 街で若葉のひとたちを見ていて、そんなことを思い出した。

まぶしい若葉のひとへ。
 いつか窮地に立たされることもあるだろう。
 そんな時、もう無理、こんな事やってられないと投げ出すか、
 このピンチをチャンスととらえて、怯まず乗り越えようと力を尽くすかどうか、だ。
 諦めてはいけない。
 いつだって、「ピンチ」は「チャンス」と同じ姿をしている。
 自分を信じて進めば、道は必ず拓けるよ。
 頑張れ、将来のリーダーたち。
 きっと、大丈夫。