役員コラム
2014.11.01
喜べる人に
㈱あさひ合同会計 取締役 今田 泉美
あるところから、管理職を目指している若い女性に向けて、体験談を交えて何かこれからのヒントになるような話をしてほしい、という依頼を受けた。私は社会人となって、今年で28年目になる。これまでを振り返って総括をしてみるいい機会だと思い、引き受けることにした。
入社して2年目のこと。当時、電話を取るのは全て女性の仕事。携帯電話もメールもない時代のことだから、固定電話にかかってくる電話の数は半端ない。電話と来客応対をしているだけで夕方となり、それからやっと自分の今日すべき仕事をするという毎日。勤続2年で、すでに社歴が一番長い女性社員となっていた私に、面倒な雑用が一気に集中するようになってきた。
そんな日々が長くなるにつれ、出口の見えない苦しさに、体力的にも精神的にも追いつめられていった。私は思い切って、雑用を他の人にも少し振り分けていただきたい旨を訴えた。
その時の所長のひと言。「雑用だって何だって、喜んでやってくれりゃあええが。」
「喜んで」という言葉は予想もしていなかったので、私は衝撃を受けた。とてもじゃないけれど、喜べるような状況ではなかった。ただ、何かとても大切なことを言われたのではないか、という思いが次第に湧いてきた。
そうだ。私が雑用だと思うから雑用になるのだ。つまらなく思えることでも、事務所全体の中で、誰かがしなければならないのなら、進んで、喜んでする人間になろう。むしろ、この人がいなければ困る、と言ってもらえるまでになってみよう、そう思った。「いやいや」でなく、「喜んで」する、という発想の転換だ。こんな切り替えも、時には大切ではないだろうか。
だからといって、次の日から状況が劇的に好転するわけでも、私が簡単に変われるわけでもない。「明日は、もう少し喜んでできるようになろう」という、自分自身との闘いを積み重ねていくしかないのだから。もちろん、28年たった今でも「今日は全く喜べなかった」と自己嫌悪する日がある。
喜べば 喜びごとが喜んで 喜び連れて 喜びに来る。(作者不詳)
私が管理職を目指したことは一度もない。
目指したとすれば、何だって喜んでやれる人になろう、自分の置かれた場所が悪いなら、どうしたら良くなるのかを、喜んで考える人になろうと、そこを目指してやってきた。これからもそうありたい。
他人は変えられないけれど、このような小さな努力の積み重ねをすることで自分自身は変えられる。
その努力の先に、喜びの道が見えてくる。