役員コラム

2014.12.01

修 行

㈱あさひ合同会計 取締役 古川 達也

 毎月お客様のところにお伺いして仕事をさせていただいているが、はじめての訪問時は、とても緊張する。何度、繰り返しても慣れることがない。こんな時、少し意識して訪問先においてある本や新聞を見てみる。会社には、商品カタログや業界の専門誌、仕事の参考書、定期購入本や経営者が精神的な支えにしておられる本など何かしらの活字が置いてある。図書から経営者の人となりを推察するようなことまではできないが、どんな本を読みどのような分野に興味を持たれているのかを類推し、会話を考えるようにしている。

 会社の業績と図書の購入や研修には相関関係があると思う。正確には、購入金額ではなく、本を読んで勉強しようとする勤勉さと業績との関係になるのかもしれない。業種によらず好業績を維持されている経営者は本当に良く勉強されていると感じる。言葉でスタッフに伝えるだけでなく、経営者が参考にした本や共感できると感じた本をスタッフに公開することで会社のカラーが醸成されている。経営者の目指す方向やその手段を共有することは、会社に一本筋を通し、強い組織を形成する上での不可欠な儀式だと思う。

 経営者もスタッフも、その会社に所属しているすべての人には共通した願いがある。それは、未来将来が今より少しでも良くありたいという強い願いである。会社は、この強い願いを共有できる人たちの集合体でなければならない。ただし、経営者だけが高い目標を掲げてもスタッフがついてこなければ、目標の達成はできないし、優秀なスタッフに恵まれても経営者に皆を導く能力や目標が無ければやはり願いの達成は難しい。

 歯科医院は女性スタッフの多い職場であり、独特な状況もある。しかし、経営者はスタッフの動きや働きを把握し、認めるという基本的な行動ができなければならないという事実は不変だろう。この基本行動ができなければ、どんなに時間とお金をかけて優秀なスタッフを採用し、教育を施してもムダにしてしまう。

 苦も無く簡単にできる能力を先天的に持ち合わせている運の良い経営者もいるが、残念な私は、失敗と努力を積み重ねなければならない。