相続・事業承継あれこれ
2025.05.12
相続人が海外に住んでいる場合
海外転勤等で、国外での滞在期間がおおむね1年以上になる場合、役所に国外転出届を提出します。この届出により住民票は除票となり、印鑑登録も抹消されます。この状況において、日本在住の家族が亡くなり、相続人となった場合の手続きを整理します。
1.取得する資料
住民票が除票である場合、相続税申告、預金の名義変更や解約、不動産登記といった各種相続手続き時に提出する、「住民票」や「印鑑証明書」を取得できません。この場合、代替書類として「在留証明」や「署名証明(サイン証明)」を取得する必要があります。この「在留証明」や「署名証明」は在外公館(日本大使館・領事館)で取得できます。
2.手続き例(署名証明)~海外に住む相続人が遺産分割協議書に署名する場合~
①日本の相続人から事前に、遺産分割協議書を海外の相続人へ送付する
②海外の相続人は、居住国の在外公館(日本大使館や領事館)に行く
③海外の相続人は、領事の面前で遺産分割協議書に署名する
④領事は、署名書類と在外公館が発行する証明書を綴り合せて割印する
≪補足と留意点≫
上記例であげたような、書類への署名が確かに領事の面前でなされたことを証明する形式ではなく、申請者の署名のみを単独で証明する形式もあります。
ただ、どちらの証明方法にするかは提出先の意向によるため、事前の確認が必要です。
なお、在外公館は首都や主な都市にあるため、海外の相続人が住んでいる場所により、
在留証明や署名証明を簡単に取得できないことがあります。
≪その他≫
海外相続人の居住地が在外公館の所在地と離れている場合等、領事が作成した署名証明の取得が困難なときは、外国の公証人が作成した署名証明や、日本国内に一時的に帰国することがあれば、日本の公証人による署名証明を利用することができます。
(事前に、提出先への確認は必要です。)
海外に相続人がいる場合、計画的に相続手続きを進めることが大切です。
なお、遺言がある場合、原則として、相続人間での遺産分割協議や署名証明が不要になるため、手続き負担を軽減するという意味で、事前の遺言準備も検討の一つです。
※内容は執筆時点の法律等に基づき整理しています。制度改正があるほか、内容につきましては、情報の提供を目的として一般的な取り扱いを記載しております。対策の立案・実行については、専門家にご相談の上進めていただきますようお願い申し上げます。