相続・事業承継あれこれ

2024.05.10

会社あて貸付金

会社オーナー等の自社宛て貸付金は、オーナー等が亡くなった際、相続財産となります。
円滑な事業承継や資産承継のため、必要に応じて生前に整理することも大切です。


1.原則の取り扱い
 元本の価額+利息の合計額で評価した額が相続財産して、相続税の対象となります。
  ・元本の価額はお金を借りる側である、会社の借入金帳簿価額と一致します
  ・利息は利息の支払契約がある場合の既経過利息をいいます(契約が無い場合はゼロです)

2.会社経営不振等により回収不能金額がある場合
 下記のような事由がある場合、元本価額を減額することができます(財産評価基本通達205)。
  ・民事再生法等の規定により再生手続き開始の決定があったとき
  ・業績不振等により、事業を廃止している又は6か月以上休業しているとき
  ・回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき

実務上判断が難しいのが、「回収が不可能等と見込まれるとき」です。
よくある例として、会社が債務超過となり、資金繰りがひっ迫し貸付金回収が滞っている場合が挙げられます。裁判で争われた事例も多くありますが、債務超過と赤字がしばらく続き、回収が滞っている事実だけで減額は認められていません。事業の実質継続性や、他の債権者(銀行等)への返済状況等、総合的な判断が求められます。

3.貸付金の整理(生前の対策)
 貸付金を整理する方法として、主に下記の取り組みがあります。
  ・会社から返済を受ける(会社に余裕資金がある場合や金融機関から借入ができる場合)
  ・役員報酬の一部を減額して貸付金の回収に充てる
  ・貸付金を放棄する
  ・会社を清算する
  ・貸付金を相続人等に生前贈与する
  ・貸付金を株式に振り替える

いずれの方法にもメリットデメリットがあります。
例えば、貸付金の放棄は、放棄を受けた会社において放棄額が利益計上され、法人税等の対象となるほか、放棄を受けたことに伴い自社株の評価が上がる場合は、他の株主が贈与税課税を受けることがあります(みなし贈与課税)。
どの方法をとるか、会社の状況等に応じて比較検討することが大切です。