相続・事業承継あれこれ

2023.08.10

個人事業主に相続があった場合のインボイス登録

令和5101日より、消費税におけるインボイス制度が始まります。
今号では、個人事業主の相続により、相続人が事業を承継した場合のインボイスの
取り扱いを整理します。

【事例】
・不動産賃貸業を営んでいた父が死亡(相続日:令和51130日)
・父はインボイス発行事業者(登録済み)
・子は元々会社員で、引き続き会社勤務を続けながら、父の不動産業を引き継ぐ予定  

【取扱い】

  1. 基本的な考え方
    相続による事業承継にあたり、父のインボイス発行事業者としての地位は子に引き継がれません。したがって、子がインボイス発行事業者となるためには、税務署に登録申請を行う必要があります。
  2. みなし措置
    子が登録申請しても、登録完了まで一定の期間を要します。そのため、子が税務署から登録通知を受けるまでは、父の登録番号を使用する期間が設けられています。具体的な期間は、父が亡くなった日の翌日から4か月を経過する日※(今回の事例では令和6年3月30日)までとされています。これは、相続があっても、事業そのものは継続していることから、実務において支障がないよう(インボイスは取引の相手方の処理にも影響します)、被相続人の登録番号を相続人の登録番号とみなす取り扱いです。
    ※「4か月を経過する日」はみなし措置の最長日であり、それまでに相続人が登録完了の通知を受けた場合は、相続人のインボイス登録番号に切り替わります。
    (参考)
    相続日から4か月以内に行う手続きとして、「準確定申告」があります。
    申告をすれば手続きとしては終わる準確定申告とは異なり、上記の通り、インボイス制度については、登録から完了まで時間を要します。相続人が登録申請していても、相続から4か月を経過する日において、まだ登録が完了していない場合は、インボイスを発行できない空白の期間が生じることになるため、余裕をもって申請する必要があります。