相続・事業承継あれこれ

2021.11.15

~個人が所有する資産を法人に低額譲渡する場合の留意点~ 

個人が所有する不動産や有価証券を譲渡(売却)した場合、譲渡税(所得税・住民税)がかかります。
今回は、個人が資産を時価より低い価額で会社(以下「法人」)に譲渡した場合の、個人側の譲渡税の取り扱いと法人側の法人税等の考え方を整理します。

【会社オーナーAさんからの質問】
私は相続対策として、所有する土地を自分が経営する法人に譲渡する予定です。
土地の時価を調べると5,000万円です。この土地は元々2,000万円で購入しているため、時価で譲渡すると、5,000万円-2,000万円=3,000万円(利益)が譲渡税の対象です。
その取引価額を購入額である2,000万円とすれば利益が出ず、私に譲渡税はかかりませんか?

【回答】
2,000万円で取引しても「時価である5,000万円で譲渡したものとみなして」譲渡税の計算をします。
したがって、5,000万円-2,000万円=3,000万円が譲渡税の対象です。

【税務上の取り扱い】
個人が所有する資産を法人に譲渡する場合、個人側に「みなし譲渡」という規定があります。
(みなし譲渡の取り扱い)
原則として、資産を時価の2分の1未満の価額で法人に譲渡した場合、時価で譲渡したものとみなす

今回の事例では、取引価額が、時価5,000万円×1/2=2,500万円未満かどうかがポイントです。
この2,500万円を下回る価額、例えば2,000万円で取り引きした場合、時価5,000万円で譲渡したものとみなし、譲渡税の計算が行われます。
実際に受け取るお金は2,000万円ですが、税務上の考え方は別、ということです。

(時価の2分の1以上の価額とした場合)
上記の事例において、例えば3,000万円で取り引きした場合、時価の2分の1以上の価額設定となり、みなし譲渡には該当しないことから、通常通り、実際の取引価額により計算します。
したがって、譲渡税の対象となる額は、3,000万円-2,000万円=1,000万円です。

(注意:資産を購入する法人の取り扱い)
法人は個人のようなみなし譲渡の取り扱いはありません。
通常の時価より低い価額で資産を購入した場合、その差額は法人税等の対象です。
上記の例において、時価5,000万円の資産を3,000万円で購入した場合、その差額2,000万円は法人として利益を受けた(「安く購入でき得をした」と考えます)として、法人税等がかかります。

個人の資産を法人に譲渡する場合、個人と法人、両方の税金バランスを考えながら、取引価額を設定する必要があります。