相続・事業承継あれこれ
2021.10.14
~贈与税の制度が変わる?~
1.検討が始まる
昨年末、甘利昭・自民党税制調査会長から、「贈与と相続の一体化を検討する。国際標準に沿う形で。」という方針が示され、来年以降、贈与税の暦年課税制度が変わるかどうか、注目が集まっています。
2.税制改正の一般的なスケジュールから
(ア)税制改正の流れ
令和3年12月に、令和4年度の税制改正方針「与党税制改正大綱」が公表されます。
令和4年1月、その税制改正大綱を基にした法律案が閣議決定を経て国会に提出され、同3月中に可決成立、同4月1日から順次施行、というのが一般的な流れです。
(イ)令和4年度税制改正において、仮に贈与税の改正が盛り込まれた場合
贈与税の暦年課税制度は「1月1日~12月31日」をその対象期間としています。
税制改正の施行は通常4月1日以降※であり、年の途中から制度が変わるというのは考えにくく、令和5年1月1日以降の贈与分を対象に変更する、というのが最短スケジュールでしょうか。
※例外的にその年の1月1日から適用される可能性もあります。他方、経過期間を設け、実施時期を数年先とすることも考えられます。
3.どういった改正となるか(予想)
具体的な検討内容は示されていないですが、甘利会長の発言から下記内容が考えられます。
(ア)「贈与と相続の一体化を検討する」から
現在の制度では、相続人等に対して相続前3年以内に行った生前贈与を相続財産に含め、相続税が課されることになっています。
これは、検討されている「贈与と相続の一体化」に近い取り扱いといえます。
その内容を見直し、例えば相続人等となっている対象者の範囲を広く設定することが考えられます。
これにより、もしかすると孫への贈与が相続税の対象となるかもしれません。
また、相続前3年以内という期間が延びることは十分考えられます(下記(イ)参照)。
(イ)「国際標準に沿う形で」から
日本のように生前贈与した財産を相続財産に含める取り扱いは、海外にもあります。
例えばドイツは10年、フランスは15年、アメリカは過去全ての贈与が対象です。
国により相続税の制度そのものが違うため、単純な比較は意味がないとはいえ、「国際標準に沿う形で」と述べられていることから、参考にされる可能性があります。
4.年内に取り組むこと
贈与を検討されている方は、令和3年中の贈与を確実に実施することをおすすめします。
仮に来年以降税制が変わったとしても、法律の性格から、過年度に遡って適用されることは、原則としてありません。なお、12月中旬ごろまでに公表される「税制改正大綱」で贈与税の改正有無とその内容を確認し、年末までに贈与を実施するということも考えられます。
今回は改正が予想される内容を中心に整理しましたが、現状は税制改正に向けて検討が始まったという段階で、現時点で確定した情報はありません。
今後の動向に注目しつつ、今できることをしっかり取り組むことが大切です。