相続・事業承継あれこれ
2021.07.14
~所在不明株主の株式処分制度~
社歴が長い会社では、株主の所在が分からないということがあります。そうした株主の株式を処分する手続きを整理します。
1.背景
平成2年の商法改正前は、株式会社設立時に株主が7名以上必要であったため、親族や知り合いの方に出資をお願いし、株主となってもらっていた会社は珍しくありませんでした。
会社オーナーから後継者への株主情報に関する引継ぎが十分でない状況において、会社オーナーや設立時の株主が亡くなった場合等に、株主の所在が分からなくなるといったことがおこります。
2.株主の所在が分からない場合の問題例
下記のような問題が生じます。
・M&Aにより会社を譲る際、所在不明株主の存在により、手続きが迅速に進まない
・種類株式導入にあたり、既存株式の内容を変更するには株主全員の同意が必要であるが、その手続きが進まない
3.所在不明株主の株式処分制度
(1)発行会社による株式処分
所定の条件を満たす場合、発行会社は所在不明株主の株式を処分することができます。
(2)条件
・5年間継続して、株主に対する通知等が到達していない※
・5年間継続して、配当金が受領されていない※
(3)具体的な処分方法
会社は所定の書類等(上記(2)も参照)を準備した上で、裁判所に所在不明株主の株式処分(売却)許可の申し立て※を行い、裁判所からの許可決定後、その株式を買い取ることができます。
その際、株主の所在が不明であり、代金を受け取る者がいないため、その代金は発行法人が預かるか、法務局に供託します。
その後10年経過すると時効が成立し、発行法人は預かっていた代金を雑収入計上します。
※事前に公告と催告を行う必要があります。
以上のように、手続きには時間がかかることから、株主の行方が分からない場合には、問題解決に向け計画的に取り組む必要があります。