相続・事業承継あれこれ
2021.02.12
~岡山県の相続税・税務調査実績(令和2年12月公表)~
昨年末、国税庁より令和元事務年度(令和元年7月~令和2年6月)の相続税・税務調査実績が公表されました。岡山県においては前事務年度、西日本豪雨災害により調査件数が減少しましたが、今事務年度は、新型コロナの影響もあり引き続き調査件数は少なくなっています。
1.岡山県の統計情報
調査件数は117件、そのうち申告漏れを指摘されたのは97件(82.9%)でした。
調査件数は、一昨事務年度(平成29事務年度)に比べ、2事務年度続けて低い数ですが、申告漏れの割合は例年とほぼ同じ水準でした。
2.税務調査の対象となる割合
前記1の調査件数(117件)は、税務署の職員が相続人の自宅等で質問や書類の確認等をした数です。
表にはないですが、それ以外に、文書や電話による問い合わせ(簡易接触)が128件あります。
そうした簡易接触もあわせた合計の調査件数は245件(117件+128件)となっています。
岡山県において、相続税の納税件数は概ね年間1,500件です。
したがって、税務調査の対象となった割合は約16%(245件/1,500件)と推定※されます。
参考までに、外的な要因により調査件数が減る前、平成29事務年度の同割合は約24%でした。
※納税と調査の時期にずれはあります
3.調査の内容
テレビや小説にあるような、意図的な財産隠しを指摘される方はごく少数です。
多くは、家族名義の預金や生命保険料の負担者など、ちょっとしたことが調査で引っかかります。(Information2020年2月号も参照)
税務調査は重圧を感じやすく、また、修正申告となった場合、罰金や延滞税の負担もあります。
財産が多いほど税務調査の対象となり易いですが、調査基準は必ずしも財産額だけではないため、相続税を納税することになった場合は、
思わぬ申告漏れがないか、十分な確認が必要です。
4.最近の話題
高齢の方が“相続直前”に多額の借り入れにより不動産を購入した節税策が、相続税の税務調査で否認された事案があります
(令和元年8月27日・東京地裁)。
以前から、“相続直前”の不動産購入による節税策の否認事例はありましたが、これまでより踏み込んだ判断が下されています。
相続税対策は大切ですが、事後、調査を受け負担を感じるのは家族(相続人)のため、相続直前の対策や極端な節税策は慎重に取り組むことが大切です。
なお、その事案では、不動産購入による節税を提案した金融機関の稟議書内容についても言及されており、税理士・金融機関等、相続税対策を提案する側も注意を払うことが求められます。