相続・事業承継あれこれ

2020.04.06

株価が下がった上場株式の生前贈与や相続

コロナショックの影響により多くの上場株式の株価が大幅に下落しています。
今月は株価が下がった上場株式の相続・生前贈与の考え方を整理します。

【1】株価が下がった上場株式の生前贈与
 損切りはせず、長期保有で株価回復を待つという場合、株式を生前贈与する方法があります。
 財産価値が下がるのはマイナスですが、税金の視点で考えた場合、贈与税の負担を抑えて次世代に財産を渡せる良いタイミングです。

   (贈与する時期の工夫)
    株式を贈与するのは、3カ月前からみて、株価が上がったタイミングが効果的です。
    例えば、6月10日にA株式を贈与したとします。
    その際、贈与日である6月10日時点を基準に、下記4つの時点のうち一番低い株価を選択して贈与税を計算できます(下記3参照)。

    今回の事例では、6月10日時点の1,300円の株式を800円で贈与できることになります。

【2】株価が下がった上場株式の相続
 相続税の申告期限は亡くなった日(相続日)から10か月です。
 例えば、令和元年7月29日に亡くなった場合、相続税の申告期限は令和2年5月29日です。
 その間、株価が大幅に下がったとしても、令和元年7月29日時点を基準に評価します※。
 「財産価値は下がっているのに、税金負担が重い・・」と感じる原因の一つとなります。
   ※贈与同様、相続日を基準に4つの株価から選択できます(下記3参照)

  (相続人に配偶者がいる場合の遺産分割の工夫)
   配偶者には、所定の条件を満たせば、最低でも財産額1.6億円までの相続については、納税が発生しない特例が設けられています。
   相続時点で価値の高かった株式は(特例により相続税がかかりにくい)配偶者が相続し、それ以外の財産を他の相続人が相続する、という工夫が考えられます。

【3】参考(上場株式を贈与又は相続する際の株価)
  ①課税時期(※)の日の最終株価
  ②課税時期(※)の月の毎日の最終株価の平均額
  ③課税時期(※)の前月の毎日の最終株価の平均額
  ④課税時期(※)の前々月の毎日の最終株価の平均額
   (上記①~④のうち最も低い株価を選択できる)

※ 贈与の場合は贈与日、相続の場合は相続日(亡くなった日)