相続・事業承継あれこれ
2020.03.11
過去の贈与財産も遺産分けの対象!?
相続税対策の代表例は生前贈与。税金対策として有効です。
一方、過去の生前贈与が原因で、相続人の間で争いが生じるということがあります。
【1】遺産分けの考え方
母が残した財産は5,000万円です。
まず考えるのが、長男・長女は各2,500万円(2分の1)ずつ相続する、という遺産分割です。
ところが、民法上、母の財産は5,000万円+1,000万円(贈与分)=6,000万円と考えます。
そうすると、長男・長女の遺産分割は下記のようになります。
長男:6,000万円×1/2 △1,000万円(生前贈与分)=2,000万円
長女:6,000万円×1/2 =3,000万円
【2】実務上の取り扱い
家族で争いがなければ、実務上は上記1のような取り扱いはせず、母が亡くなった時点での財産(5,000万円)を基に遺産分けをするほうが一般的です。ただし、家族の仲が悪いと、過去の贈与が問題になるため、注意が必要です。
また、対象となりえるのは過去の贈与全て※です(税金計算や遺留分とは考え方が異なります)。
※どの程度まで対象にするか等については、話し合い(状況により裁判等)で決めます。
【3】争族を防ぐ生前の準備
遺言書に「過去の贈与については、遺産分割の対象外とする」ことを明示すれば、法律上、遺産分割財産から除かれることになっています(但し、遺留分は制限できません)。
今回の事例では、例えば下記のような一文を遺言書に織り込みます。
「長男には生前に住宅資金の援助をしているが、相続財産としては考慮しない」
【4】その他
争いにならなくても、相続人間でなんとなくしこりが残る、ということは珍しくありません。税金対策に取り組みながら、遺産分けへの影響にも気を配る必要があります。
なお、形(遺言書)だけでなく、遺産分けについて、生前から家族と話をすることも大切です。
《参考(令和元年7月1日から実施されている制度)》
婚姻期間20年以上の夫婦であれば、配偶者に自宅不動産を贈与しても、相続時点で、その贈与分は遺産分割対象に含めない、という取り扱いになりました。
今回の事例には該当しませんが、制度改正にあわせた取り組みも必要です。