相続・事業承継あれこれ

2019.06.06

オーナーが会社に賃貸している土地等(宅地等)の80%評価減

会社オーナーに相続があった場合、会社に賃貸している土地等(土地家屋として賃貸している場合も含みます)については、一定の要件を満たすと評価が80%減額となる特例があります。
会社に賃貸中の土地等がある場合には、要件を満たすか確認をしておきたい特例です。

1.減額特例の内容
会社オーナーが事業を営む会社に貸し付けていた土地等(宅地等、以下同じ)については、所定の要件を満たした場合、「特定同族会社事業用宅地等」として、その土地等の評価額が80%(上限の面積は400㎡)減額できます。本社屋や工場の土地等での活用が考えられます。
(参考:小規模宅地等の特例)

他の用途、例えば自宅の土地等や不動産貸付をしている土地等についても、要件を満たした場合に評価が減額できます。これらの特例を総称して「小規模宅地等の特例」といいます。
用途に応じ、要件・減額割合・減額対象となる上限の㎡数等がそれぞれ設定されています。

2.特例を受けるための主な要件
【被相続人(会社オーナー)の要件】
・相続開始直前に、被相続人が会社株式等の50%超(親族等含む)を保有している
・土地等(建物付きを含む)を一定の対価を得て継続的に貸し付けている

【相続人の要件】
・相続人(役員)が相続税の申告期限までにその対象となる土地等を取得する
・対象の土地等を相続税の申告期限まで引き続き所有し続ける

【会社の要件】
・対象の土地等を相続税の申告期限まで本来の事業※の用として使用する
 ※不動産賃貸業は除く(貸付事業用として別途取り扱いあり)

3.生前の相続事業承継対策としての活用検討
現時点で会社オーナーに会社へ賃貸している土地等がない場合でも、会社が所有している土地等をオーナーが買い取り、上記2の要件を満たすと特例が活用でき、相続税対策となります。

なお、オーナーから会社宛ての貸付金がある場合には、買取代金と貸付金を相殺し、あわせて貸付金の処理を行うこともあります。また、土地の時価が帳簿価額より低い、いわゆる含み損の状態である場合には、実行により会社側で特別損失が計上され、法人税の負担が減ります(適正な時価で取引することが大前提です)。結果として、株価が下がる可能性もあります。

(参考)
税務調査に備えた経済合理性の整理はもちろんのこと、オーナーに入る賃料の蓄積は将来の相続財産となるほか、実行時の不動産取得税・登録免許税の負担、個人所有とすることが経営の観点から問題がないのか等、短期~中長期的視点からの検討も必要です。