相続・事業承継あれこれ
2019.04.04
配偶者が認知症の場合に考える遺産分割対策
認知症により意思能力がないと認められる場合、遺言や生前贈与といった行為が制限されます。そのため、相続対策は“頭も体も元気なうちから取り組む”ことが大切です。
ただし、自身の対策はできても配偶者が認知症の場合、将来の遺産分割は不安定です。
1.配偶者が認知症の場合(事例)
上記事例で考えられる基本的な対策は遺言です。夫は遺言により希望する財産を妻に渡すことができます。ただし、妻は意思能力がなく、遺言を準備することはできません。その結果として、夫の財産を相続した妻に将来相続があった場合、長男・長女は同じ割合で相続することになります。
2.民事信託(家族信託)の活用
上記事例の課題を解決するため、民事信託(家族信託)を活用する方法があります。
信託というと“〇〇信託銀行”を思い浮かべる方も多いと思いますが、“〇〇信託銀行”で手続きをすることはなく、家族の合意で成り立つ仕組みです。
例えば下記のような取り扱いを、夫の生前に取り決めておくことができます(信託契約)。
①夫の財産管理を長女に任せ、長女が夫に必要な生活費や介護費用の管理及び給付を行う
②夫が死亡した場合、①の財産は妻に渡し、長女が引き続き財産管理及び給付を行う
③妻が死亡した場合、①②の信託契約を解除し、残った財産を長女が取得することとする
具体的には、上記の内容を信託契約書※として残します(専門家が関与した上で公証役場で手続きを行うことが一般的です)。
※信託契約での立場
夫 :委託者兼当初受益者
妻 :第二受益者
長女:受託者
(その他検討すること)
長男は最低限の相続する権利(遺留分)を持ちます。信託を設定した場合の遺留分の取り扱いは諸説ありますが、紛争を避けるため、実務上は考慮する必要があります。
また、財産管理の面では信託が有効ですが、各種手続きの観点から、成年後見制度を併用することも検討します。